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    棚ボタ雅楽での思考の顛末

    以前の職場に 東儀秀樹さんが買い物に来たことがある
    髪は乱れ シャツはなんとなくへろへろ
    ヴィトンのバケツ型バッグを持って 少し急いでいたようだった
    公共放映と私生活とは わけておいてあげたいもの

    今年はどうも雅楽が棚ボタしてくる傾向にある

    一度目は六月くらいだったか 習っている義太夫三味線の先生から
    チケットがあるからお稽古お休みにして聴きに行こうと
    誘って頂いたので 早めに集合してお茶かと思いきや
    生まれ持った性状につき ビールをひとしきり呑んで
    それから紀尾井ホールに出かけて行った これが一度目

    そして今日 六年ぶりだかの晴れた中秋の満月
    二度目となった雅楽えくすぺりえんす
    先日からの あらかじめの打診により 
    バイト先の上司が もらったけれど行けないかもしれないかもな
    赤坂にある日枝神社での 中秋管絃祭のチケットを譲って頂いたため
    朝7時からのバイトを終えた後 向かった

    雅楽と言えば武満徹の「秋庭歌一具」
    これをなぜかずいぶん以前に買って 好きで聴いていたのだが
    神社の境内で ナマで ソトで 風の吹く中 虫の音の中
    雅楽を聴くというは初めてのこと

    社殿の正面に作られた舞台の両脇には 
    葉のたくさんついた 細くて背の高い笹だか竹だが添えられ
    境内の孟宗竹とともに ざわざわとしていた
    ぐるりと見回すと赤坂のビルたち 
    かえって社殿の朱がきっぱりみえる

    そんな中始まった中秋管絃祭
    始めの山王太鼓という力強い太鼓が終わって いよいよ管弦
    チューニングが曲になった 黄鐘調音取(おうしきちょうのねとり)
    から始まり三曲 次いで神楽舞も三曲
    座った席がたいそう見づらかったことと 早朝バイトがたたり
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    言葉のいらない世界ではちみつから説教うける

    ♪町の明かりが 消えたチャンスで 心中
     らぶすーさいど そね~ざき~♪

    つまるところの 杉本文楽を観た後
    そこから歩いて 旧日本郵船の倉庫 BankART
    横浜トリエンナーレ の一会場だけ観てきた

    トリエンナーレというからには3年に1度 
    しかし考えてみればいままで 
    足を運んだことがなかったこれでも美大卒のはしくれ

    どの作家が観たいという目的もなく入っていった
    というのも これがだれとか そういう名詞がほしくなかった

    どでんと 土で作られた 作られかけのカバが目をひいた
    それから横の部屋に入って 霧の中 枠のような影のうごめく様子
    これが自分の中で さっきまで観ていた曾根崎心中とつながり
    しばしぼけっと座り込んで観ていた
    大きな木の根っこが天井から生えているのは 木が各階をつっきっている
    たまごを光にかざすと文字が現れる
    土の山の上に刺さっているのは 砂浜で集めた砂鉄で作られた一本のスプーン
    赤や黄色の散乱する鉄骨の内部にまた世界あり
    横たえられた人工の森林
    塩の結晶でできたシャンデリア
    渦巻き上に水に浮かぶ大量のすいかの中に浮く裸の女性エンドレス
    ごくありふれた日用品を猿の面をかぶって 新たな目で観てみる
    GPSをつけて町を花の形に走り 巨大な花咲く木を作り上げる
    世界のあらゆる映画の時計のでてくるシーンをつないで
    24時間同時刻に進んでいく映画 などなどなど
    ここにこぼしているものはまだまだあるが いろいろ堪能した

    そこで思った点は インスタレーションなどに混ぜて
    映像を"展示"することの難しさ 
    人を思う通りに引き止めておくことはなかなかできない
    そしてキャプションはいるのかいらないのか
    よくこれは話されることだと思う
    今回はほぼ一切キャプションを見なかった おかげで
    どれが誰の作品かも把握せず 作家の意図もたぶん知らない
    ただそうすれば自分の感情と体験がしっかり記憶になると感じた
    他人に少しでも見せるものには 他人の気を惹けること
    エンターテイメントの要素がいかにあるかがやっぱり重要で
    それは単にわかりやすいということとイコールではない
    あら人間と人間の付き合いも一緒だわなんて
    通り一遍なことも通り過ぎる毎日なので再確認する

    ますますやっぱり言葉を排除したものを作りたくなった

    とかごちゃごちゃ深呼吸しながら体感すれば 喉が渇く
    BankART内のバーで はちみつの地ビールなるものと
    田園調布のパテ屋のレバーペーストを頼んで もしゃもしゃ
    レバーペーストは口当たりがふんわり軽快でおいしい一方
    はちみつの地ビールは最初のふた口以降 
    はちみつが口うるさくなってきたのであまりよくなかった

    チケットは横浜市美術館の会場にも入れることになっていたが
    時は夕刻 もう閉まる時間がせまっていたので
    また同じチケットで後日入れるということだから 
    つづきはまたのお楽しみということにした




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    Author:いいむらえりこ
    歌舞伎のイタコ修行中
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    墓に片足つっこんだ話

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